Q.ひとりだけに遺産を残すなど、遺言書通りに財産を分けなくてもいいの?
A.ひとりよがりな遺言書はトラブルの元になります
遺産を分けるには、遺言書を書いて財産を指定する「指定相続」と、法律で定められた「法定相続」にそって分ける「法定相続」という方法があります。遺産を誰にどれだけ残すかなど、その人の意志が示されている場合は、「指定相続」が「法定相続」よりも優先されます。ただし、遺言書にはルールがあるので、ひとりよがりな遺言は、残された家族にもめごとを残すことになるので注意しましょう。
ひとりよがりな遺言が書かれる理由としては、今でも長男が遺産は相続するものだと思いこんでいたり、いつまでたってもきょうだいは仲がいいからトラブルは起こったりしないという幻想を抱いていていることなどが考えられます。誰かに多く遺産を残したとしても、トラブルにならないと思い込んでいるだけなのです。
けれどこれは幻想であって、いつまでたってもきょうだいが仲良しというわけではありませんし、家族環境も生活環境も変われば、関係も変化しています。親の思い込みや幻想でひとりよがりな遺言書を書くと、あとでもめるのは残された家族です。遺言書は、ルールを守ったうえで書きましょう。
「遺留分」を侵害するような遺言書はトラブルの元!
「遺留分」を侵害するケースは、いろいろなパターンがあるようです。ある税理士から聞いたはなしですが再婚した男性から、財産すべてを今の妻に譲りたいという相談があったそうです。相談者の男性には、前妻との間に子どもがいるのですが、その子どもに財産を譲りたくないのでどうすればいいかという内容です。同じような相談があるので、これは決して珍しいケースではないようです。
すでに述べたように先妻の子どもにも「遺留分」があります。相談者には、妻に何を相続させるのか遺言書を明確に書いておくことと、先妻の子どものために遺留分の遺産を残すことをすすめましたと聞きました。遺産はすべて妻にというのはなんらかの理由はあるのでしょうが、先妻の子どもの気持ちを考えると複雑な気持ちになったとその税理士はいっていました。
付言事項は意外に有効!
上記で遺言書の「指定相続」が優先されるといいましたが、相続内容に差があったり、同額だったりしたとしても、「遺言通りの分け方には納得できない!」ということはあります。相続額が変わるには、「同居している」「介護で世話になっている」などといった理由が想定されます。そういった理由がある場合は、遺言書に付言事項として、ご自身の気持ちを書いておくことをおすすめします。
例えば、相続人が子ども2人のケースで、子Aには不動産と預貯金1/2を、残り1/2預貯金を子Bになどと書かれていたら、Bはどう思うでしょう。「Aばかり多いなんて不公平!」「私のほうが面倒みていたのに…、もしかして愛されてなかったのかな…」などと、というわだかまりが残ります。けれど付言事項に、Aに家を相続させたい理由、Bのことも思い預貯金を残すことなど書いておくと、受け取った側の心情は違います。付言事項は、親から子どもへのメッセージとして、とても有効です。
