Q.相続する予定の土地が連帯保証債務になっていたらどうする?
A.遺産相続は、不動産や預貯金だけでなく借金などの負債も相続することに
遺産を相続することは、不動産や預貯金などもらってうれしい財産ばかりではありません。なかには借金などの負債を相続することもあります。額によりますが、借金まで相続することに戸惑う人も多いのではないでしょうか。借金をしていることは、家族には言いづらいことなので隠していることもあります。多額な借金があれば、遺産放棄すればいいので借金を背負わずにすむと考える方もいますが、相続放棄するということは、今ある家や土地、預貯金などすべてを放棄することになるのです。相続を放棄したことで住む家やこれから生きていくために必要な生活費にも困るということが出てくるので相続放棄は慎重に考えなくてはいけません。
借金額がわからないときは「限定承認」という方法も
相続する金額と借金のどちらが多いわからないときは、「限定承認」という方法もあります。限定承認とは、相続する財産から借金を返済して、借金が残ったときはそれ以上返済しなくてもよく、お金が残ったときは、その財産を相続するという条件つきの相続です。ただしこの手続きは、相続人全員が同意して行う必要があり、相続があったと知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する期限があります。あわてて相続放棄するよりも、この方法も検討してみてはいかがでしょう。ただし、「限定承認」は法律で定められた手続きが必要です。
●限定承認に必要な書類
① 限定承認の申述書
② 申述人(相続人)全員の戸籍謄本:各1通(相続放棄者をのぞく全員)
③ 被相続人の戸籍:各1通
④ 財産目録:各1通
⑤ 当事者目録:1通
連帯保証人になっていないかも確認を
銀行などに本人が借金をしている場合は、比較的早く気がつくことができるのですが、それ以外に連帯保証人という隠れた債務を相続していたということがあります。あるケースでは、母親の不動産を相続したので不動産の謄本を取り寄せると、その不動産が保証債務になっている記載がありました。知らないうちに母親が知人の連帯保証人になり、不動産担保提供していたのです。連帯保証債務は、借金同様にその身分が相続の対象となります。このケースでは、不動産を担保にしていたため謄本に記載されていたのですぐにわかりましたが、これはまれなケースで多くの場合、連帯保証人になっていることは、知らないままの家族も多いのです。
しかも連帯保証債務は、返すかどうかわからない借金になるので、相続税では債務として計上することはできません。相続したあとで、ある日突然、借金支払いの督促がきて、肩代わりしなければならない恐い借金です。
「連帯保証人になっていないの?」などとは聞きにくいのですが、事前にしっかり確認しておきましょう。遺産にはもらってうれしい財産だけでなく、借金などマイナスの相続についても、親に確認しておくことが重要だということです。連帯保証人をはずすとなると弁護士に依頼して、銀行と交渉など、手続きも簡単ではないのです。
個人事業主の借金は一括返済をせまられる可能性も
そのほか借金返済で注意したいのが、個人事業主の家族が突然亡くなったときです。借金があると一括返済を迫られることがあるからです。残された妻が専業主婦などで、夫に多額な借金があり事業内容も引き継ぐことができない場合は、一括返済を迫られ相続を放棄するしかないなどということになる可能性があるのです。
前にも述べたように相続放棄すれば、相続するはずだった家も預貯金も失います。そうならないためにはそれに見あったお金を準備しておくか、それが無理なら保険などで借金返済や家族の生活費を準備するなどの対策を考えておくことが大事です。
